実験環境を作る#5 – 実験しやすいように整えていく

前回、ある程度厳寒環境の構築ができたので、今回は実験の精度を高めたり実験をスムーズにするために、実験環境を整えていきます。

ドライアイスとエタノールの受け皿は、ホームセンターで買ったアルミ製の受け皿と、ロガーを置くためのバット。

主な金属の中で熱伝導率で見ると

銀>銅>金>アルミニウム>マグネシウム>亜鉛>鉄>スズ>鉛

となっており、受け皿として手に入れれるものでアルミニウムはよさそうです。(銅製があればなおよいですが)

また、実験後に受け皿にたまったエタノールなどを処理する際など扱いやすいようにするために、発泡スチロールの側面に靴棚などで使う棚レールを設置してみました。

小さい改良点ですが、少しずつですがただの発泡スチロールが実験装置らしくなってきました。

 

その作業と並行して、来年2月5日からの展示準備もがしがし進めながら、という状況です。
https://siaflab.jp/wic2021/

実験環境を作る#4 – 日本の最低温度記録を更新

前回の実験の反省を踏まえて、今回は最初からエタノールにドライアイスを浸した状態で、かつその表面積を広く取りできるだけ空気を冷やす方法で取り組んでみます。

エタノールをドライアイスにかけると、もわっと霧がかり、冷気を感じることができます。

準備ができたのであとはひたすら待って計測。

20分くらいたったところで、前回を大きく超える数値に。ドライアイスに浸しているエタノールの温度はマイナス70.8℃に。ここまでくると肌感での想像は難しいですね。

空間内の底につけたプローブの温度も-58.1℃で、キンキンに冷えた空気になっているようです。

今回は2Kgのドライアイスでどれくらい継続して冷やすことができるかということも計測の目的でしたので、最終的な温度推移の結果はこちら。

グラフの青い線が底部の温度になるのですが、大体10時間はマイナス50℃以下を継続して記録できることがわかりました。

 

 

 

実験環境を作る#3 – 日本の最低温度記録を目指してみる

前回で準備が整いましたので、実際に低温環境を作成して温度をはかっていきたいと思います。

https://data-logger.siaflab.jp/2020/12/04/%e5%ae%9f%e9%a8%93%e7%92%b0%e5%a2%83%e3%82%92%e4%bd%9c%e3%82%8b2-%e4%bf%9d%e5%86%b7%e5%ba%ab%e3%82%92%e4%bd%9c%e3%81%a3%e3%81%a6%e3%81%bf%e3%82%8b/

https://data-logger.siaflab.jp/2020/12/03/temperature_sensor/

 

今回、低温環境を作るために、ドライアイスを使って保冷庫内の温度を下げていきます。使ったのは1kgのドライアイス2個(大体1個700円程度で購入できました)。

保冷庫の中に、2つ積み、保冷庫内の底と蓋の付近、そして保冷庫の外に温度計のプローブを3つセットして計測開始です。

蓋をしめると一気に温度計の数値が下がっていきます。

 

30分くらいたったところでの温度は、左上T1が-27.6℃=保冷庫内の底、T2が-0.2℃=保冷庫内の蓋側、T3,T4は箱の外となっています。
最初の下がる勢いはなくなったのですが、全体的にゆっくり下がっていくのを計測できます。

ただ、この状態で最終的に1時間近く観測しても、-34℃が限界でした。

2020/12/03,18:45:52,18.0,18.0,18.1,OL - 観測開始時
2020/12/03,19:10:07,-34.2,0.6,17.3,OL - 最低気温

この状態からドライアイスはとけてないのですが徐々に気温が上がってきました。
原因としては、現在のところ推測ですが、ドライアイスが気化した際にでるドライアイスのふわふわ(成分は???)が空気の熱伝導を妨げて、下がる力が弱まった?などが考えられそうです。

ここで、新たに色々調べ、熱を空気に伝える触媒としてエタノールにドライアイスを浸して、実験を継続することにしました。

エタノールにドライアイスを浸した状態で、さらに観測を継続します。

ここから4つ目のプローブをエタノールの温度を観測できるようにした状態にしました。

すると、先ほどよりもぐんぐん温度が下がっていきます。最終的に、この日、エタノール自体は-57.7℃、保冷庫の底の気温は-34.8℃あたりまで観測することができました。

ドライアイスの温度が-80℃近いことを考えると、まだまだ改善の余地はありそうですが、一旦気温は-30℃を超えることはできましたが、日本の史上最低気温は-41℃とのことで、そこまでは到達できませんでした。(北海道旭川で最低気温-41℃が観測史上最も低い最低気温 – wikipedia)

次回の課題としては、この最低気温を超えることが目標になりそうです。

実験環境を作る#2 – 保冷庫を作ってみる

高精度温度計の準備ができたところで、発泡スチロールの箱を低温環境を作るための保冷庫(と仮に呼びます)を準備します。

超低温環境を作るならば、中を覗きたい!というわけで、360度カメラが入るように加工します。結露の問題があるので、慎重にする必要があります。やっていることは見ればわかるので、今回は写真で紹介します。細かい作業は小町谷さんにお願いします!

 

 

ここまで来て、今日は実機が届かないことが判明!

というわけで、カメラを入れるのは次の実験日に持ち越すことに…残念。

 

 

この日、この後の実験の様子は、次回レポートしたいと思います。(↓ユニフォームっぽいですね)

 

 

実験環境を作る#1 – 高精度温度計を使ってみる

このプロジェクトの根幹でもある、「データを取得する」という行為をするにあたり、これまでいろいろな実験の中で、「基準となるデータをどう定義して取得できるようにするか」というのが課題としてあがってきました。

今回、高精度の温度計を使って、これから作成していく自作データロガーデバイスの取得した数値などがきちんと精度が出ているか、どんな特性があるかどうかなどを把握できるようにしたいと思います。

利用するのはTC0304という温度計。4つのプローブ(温度を測る部分)を接続して、4つの温度を同時に測ることができる温度計です。温度計自体はその用途や機能によって求められる精度が違ってくるので、家庭用の室内の温度計のような数百円で測れるものから、産業用や研究用に利用されるような数十万・数百万円以上するようなものまで存在しています。

TC0304

プローブ

PCにつないでリアルタイムロギング

計測グラフ

TC0304に付属するソフトウェアを使って、リアルタイムに温度計の状況を確認することができます(温度計はRS232のステレオピンジャック-PC側はUSBのシリアル通信)。ソフトウェア側ではCSVでのデータ保存ができたりします。

これで、温度の方は記録する環境ができたので、次は計測できる実際の環境を作るフェーズに移行していきます。

冷凍庫実験 #01

車載冷凍庫とドライアイスを使った簡単な実験を実施しました。ひとまず、低温試験ができるような環境を自作できるのかを検証することが目的です。

今回準備したのは、-22℃まで冷える車載冷蔵庫と、ドライアイス(2Kg)、アナログの温度計です。

車載冷凍庫は、2時間ほどかけて-20℃を前に下げ止まり。ドライアイス2Kg を入れてから急激に冷えて1時間経たずに-35℃前後まで下がったものの、そこから冷えず。

今回、車載冷凍庫の温度計はエラー表示になってしまったので、信用できる正確な温度計が必要。ちなみに、今回使った温度計はAmazonでとりあえず見つけてきたもの。安いものは低温が測れないものが多いけど、これは -50℃対応とのことだったので買ってみました。(https://www.amazon.co.jp/gp/product/B000FHU9D6)誤差±1℃とのことなので、この実験をするには問題はなさそうですが、グラフを作ったりするならば、やはりデータで残せるもので信頼できるもの(高価でないもの)が望ましいです。

次回は、車載冷凍庫ではなく、発泡スチロールの箱とドライアイスだけを使うことに決定。

少し検索してみると、北海道の観測史上の最低気温は、明治35年(1902年)1月25日、上川測候所(現在の旭川地方気象台)で記録された-41.0度で、これは日本最低気温(富士山頂より低い)のようです。

というわけで、-50℃を目指して、冷凍庫(自作極限環境/自作耐用試験環境)を作っていきたいと思います。

ドライアイスを入れた図。なんとなく入れておいたロガーは最終的に正常に動作していませんでした。
この日の最低温度